厚生労働省は、一部の有料老人ホームで問題となっている過剰な介護サービスの提供(囲い込み)や虐待の増加などを受け、施設の規制強化に乗り出す方針を固めました。
ニュースの要点
• 目的: サービスの質の確保と入居者の保護。
• 対象: 要介護度の高い高齢者を受け入れる有料老人ホーム。
• 規制強化策: 現行の「届出制」から「登録制」へ移行する方針。
• 経緯: 10月31日の検討会で厚労省案が示され、大筋で了承されました。
• 今後の流れ: 具体的な制度設計に着手し、必要な法改正を検討します。
考察:規制強化の背景と期待される効果
今回の規制強化の動きは、有料老人ホームが抱える深刻な問題に対応するものです。

1. 規制強化の必要性:届出制の限界と「囲い込み」の問題
現状の届出制は、開設時の行政の関与が限定的であり、問題のあるホームへの指導・監督に限界があるとの指摘がありました。特に以下の点が問題視されています。
• 過剰サービス(囲い込み):
• 一部のホームが、関連法人の介護サービスを利用者に対して強制または誘導し、必要以上に多くのサービスを提供することで、介護報酬を過度に得るビジネスモデルが存在します。
• これは、利用者のサービス選択の自由を奪い、不必要な介護保険給付費の消費につながっています。
• ケアマネジャーが施設の意向に反した場合に独立性・中立性が脅かされるケースも報告されています。
• 質の低下と虐待: 参入の容易さから杜撰な運営を行う事業所が増え、入居者の安全・安心の確保が課題となっています。
2. 「登録制」導入による変化と効果
「登録制」の導入は、行政の関与を強化し、参入段階で一定の質や体制を担保することを目的としています。
• 参入規制の強化: 届出制よりも厳格な審査や基準が設けられる可能性が高く、不適切な事業者の新規参入を防ぐ効果が期待されます。
• 質の確保: 特に要介護度の高い高齢者を受け入れる施設を対象とすることで、より重度者に対応できる職員体制や医療連携などの基準が設定され、サービスの質の底上げにつながる可能性があります。
• 透明性の向上: 登録制に加えて更新制の導入も検討されており、継続的な指導監督が可能になることで、施設の運営の透明性が高まり、不正行為や虐待の抑制につながると期待されます。
今回の規制強化は、高齢者が安心して生活できる環境を確保し、介護保険制度を適切に維持するための重要な一歩と言えるでしょう。今後の具体的な制度設計の議論に注目が必要です。

一部の有料老人ホームで横行している「囲い込み」や過剰介護の問題については、こちらの 要介護者囲い込み【過剰ケアプラン】に対する実地指導 動画で、問題の構造や厚労省の実地指導対策が解説されています。

 
  
  
  
  
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