
ヘルパーさんが行う服薬管理と服薬介助は、利用者の健康維持や治療効果を高めるために重要な役割を果たします。以下に、服薬管理と服薬介助のポイントを説明します。
1. 服薬管理
服薬管理とは、利用者が適切な薬を正しいタイミングで服用できるよう支援することです。具体的な手順は以下の通りです。
1.1 薬の確認
- 処方箋の確認: 医師の処方箋に基づき、薬の種類、量、服用時間を確認します。
- 薬の内容確認: 薬の名前、形状、色、量が処方箋と一致しているかを確認します。
- 有効期限の確認: 薬の有効期限が切れていないかを確認します。
1.2 服薬スケジュールの作成
- 服用時間の設定: 1日1回、2回、3回など、医師の指示に従って服用時間を設定します。
- 食事との関係: 食前、食後、食間など、食事との関係を考慮してスケジュールを作成します。
1.3 薬の保管
- 適切な保管場所: 直射日光や湿気を避け、適切な温度で保管します。
- 子供やペットの手が届かない場所: 誤飲を防ぐため、安全な場所に保管します。
2. 服薬介助
服薬介助とは、利用者が実際に薬を服用する際の支援を行うことです。具体的な手順は以下の通りです。
2.1 服薬前の準備
- 手洗い: 介助者と利用者の両方が手を洗い、清潔を保ちます。
- 薬の準備: 服用する薬を正確に準備し、水やお茶などの飲み物も用意します。
2.2 服薬時の支援
- 声かけ: 利用者に服薬時間であることを伝え、薬を渡します。
- 服用確認: 利用者が実際に薬を服用したことを確認します。
- 飲み込みの支援: 飲み込みが難しい場合には、ゼリー状の薬や粉薬を水に溶かすなど、飲みやすい形に調整します。
2.3 服薬後の確認
- 副作用の観察: 服薬後に異常がないか、利用者の状態を観察します。
- 記録: 服薬した時間や量、利用者の状態を記録します。
3. 注意点
- 医師や薬剤師との連携: 服薬管理や介助中に疑問点があれば、すぐに医師や薬剤師に相談します。
- 利用者の意思尊重: 利用者が服薬を拒否する場合には、無理に服薬させず、理由を聞き、必要に応じて医師や家族と相談します。
- 緊急時の対応: 服薬後に異常が現れた場合には、すぐに医師や救急車を呼ぶなど、適切な対応を取ります。
4. 記録と報告
- 服薬記録: 服薬した日時、薬の種類、量、利用者の状態を記録します。
- 報告: 利用者の状態や服薬に関する問題があれば、上司や医師に報告します。
5. 利用者と家族への説明
- 服薬の重要性: 利用者や家族に、服薬の重要性や副作用について説明します。
- 服薬方法の指導: 正しい服薬方法を指導し、理解を深めてもらいます。
まとめ
ヘルパーさんが行う服薬管理と服薬介助は、利用者の健康を守るために非常に重要です。正確な情報と適切な支援を行うことで、利用者が安心して治療を受けられる環境を整えることができます。
訪問介護の服薬介助とは
訪問介護員が行う服薬介助は、身体介護のサービスに含まれています。
服薬介助は、医師から処方された薬を利用者に安全に内服してもらうための介助です。
服薬介助は場合によっては医療行為に当たることもあるため注意が必要です。
また、服薬介助にはその準備方法や、服用方法について注意すべきポイントがあります。
準備や服用方法については後ほど詳しく説明します。
参考:厚生労働省「08 参考資料1 参考資料(訪問介護、訪問入浴)」
訪問介護員は服薬介助をどこまでやっていい?
では訪問介護員が行う服薬介助はどこまで行うことができるのでしょうか。
訪問介護員ができることとしてはいけないことを詳しく見ていきましょう。
訪問介護員が服薬介助でできること
厚生労働省から出されている通達によると、
- 水と配薬された薬の準備と確認
- 内服の手伝い
- 後片付けと確認
をするように記されています。
上記の内容から、訪問介護員ができることは、
- 一包化(1回分の薬を1つの袋にまとめてある状態のもの)された薬をテーブルに準備すること
- 本人が薬を飲むのを手伝うこと
- 後片付け(薬袋の始末)をすること
が行っても良い業務であるといえます。
訪問介護員が服薬介助をしてはいけない場合
上記が訪問介護員ができる範囲であることがわかりましたが、反対にできないことも頭に入れておかなければなりません。
厚生労働省より医師法・歯科医師法・保助看法の解釈について通達を出されています。
下記のような場合は医療行為に該当するため、訪問介護員による服薬介助は行うことができません。
- 入院等をして治療する必要があり、状態が安定していない
- 副作用の危険性が高いものや投薬量の調整をするため、医師や看護師が続けて状態を経過観察しなければならない状態
- 誤嚥や肛門からの出血など、専門的な配慮が必要な場合
- 一包化されていない(PTPシートから出す)状態の薬
参考:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
訪問介護の服薬介助における7つのポイント
訪問介護員が服薬介助をする際に押さえておきたい7つのポイントを紹介します。それぞれ1つずつ詳しく見ていきましょう。
1.服薬のタイミングをしっかりと確認する
医師が処方する際には必ず、服薬するタイミングの指示があります。様々なタイミングがありますが、
- 起床時
- 食前
- 食直前
- 食後
- 食直後
- 食間
- 就寝前
と指示されることが多いです。
食後の指示はよくあるためわかりやすいですが、食間や食直前後なども薬によってはあるためしっかりと確認しましょう。
服薬のタイミングで、食前(後)の指示は食前(後)30分以内、食直前(後)は食事の前(後)で服薬するようにしましょう。
また食事中と間違われやすい食間ですが、食事と食事の間に内服することなので注意してください。
2.飲み間違いのないように工夫する
服薬介助で危険なのは飲み間違いをしてしまうことです。
飲み間違いを防ぐための工夫を紹介します。
薬を一包化する
前述した通り、訪問介護員は一包化した薬しか服薬介助を行うことができません。
たとえ十分に注意してPTPシートから取り出して行おうとしても、ミスをしてしまう可能性があります。
医師へ一包化を依頼し、処方薬を一包化をしてもらうようにしましょう。
お薬ボックスで管理をする
薬局から薬を受け取った時には薬袋がつながった状態や一包化の袋が数種類に分かれていることもあります(同封することができない薬剤もあるため)。
そのため、お薬ボックスや配薬カレンダーなどを利用して1回ずつに分けておくことをおすすめします。
お薬ボックスやカレンダーへの配薬は医師または歯科医師の指示を受けた薬剤師または看護師しか行えません。
医療行為のため訪問介護員が行うことはできないので注意してください。
3.服薬する時の姿勢
服薬するときには食事の時と同様、姿勢が大切になってきます。
服用するときにはしっかりと体を起こして誤嚥しない体制で行いましょう。
誤嚥することで肺炎になったり、薬によっては逆流した場合、食道に炎症をきたしたりするものもあります。
4.薬を落とさないように注意する
服薬介助で薬を口まで運んだり手に出したりすることもあります。
そのときに薬が落ちてしまい服薬できていない状態になることもあります。
1錠ずつ出して確実に口にいれることができるようにしましょう。
5.お茶やジュースではなく、水で飲んでもらう
お茶やジュースで服薬すると、薬の種類によっては薬効が高まってしまったり、期待した効果が出なかったりすることがあります。
そのため水や白湯で服薬してもらうことが大切です。
6.服薬後に体調の変化がないか確認する
無事に服薬できたと思ったら、急に気分が悪くなったり、ふらつきが強くなったりすることもあります。
服薬して終わりではなく、その後に体調の変化がないかを確認することも服薬介助の一環ですので、忘れず観察しておきましょう。
7.服薬介助の記録をしっかりと残す
訪問介護員は基本的に1人で訪問することが多いため、どのように服薬したのか、いつ服薬したのかなど必要なことを記録に残しておきましょう。
この記録は法的効力があるため、もしものときに自分を守ってくれます。
忙しいでしょうが、しっかり書いておくことをおすすめします。
認知症の方に服薬介助をする時の注意点
服薬介助を依頼されるケースで多いのが認知症の方です。
認知症の方は短期記憶障害があるため、薬があることや内服することを忘れてしまいます。そのため訪問介護員には様々な工夫が求められます。
お薬カレンダーを使う
先ほども記載しましたが、お薬カレンダーを使用すると自身で服薬することができる場合もあります。
また服薬カレンダーを見るといつ服薬していないかもわかるため、認知機能の低下を早期発見することが可能です。
明るい声かけをする
認知症の方は訪問介護員の顔を覚えることが難しい場合があります。
そのため暗かったり威圧的な声でアプローチしたりすると服薬を拒否されてしまうことにも繋がります。
明るい声でアプローチして、安心感を与えてから服薬介助を行うことをおすすめします。
疑似薬を用いる
認知症の方の中には「薬を飲んでいない」「睡眠薬をください」など要望される方もいます。
要望されても過剰に服薬することはできないため、疑似薬を使用することもあります。
薬をもらえたという安心感やプラセボ効果により、落ち着いたり眠りにつけたりすることもあるので、上長へ相談の上、ケアマネージャーに検討を依頼しましょう。
服薬拒否された時の対処法
服薬介助をするときに服薬拒否をされる場合もあります。
その場合にはどのように対応すると良いのか、対処法を紹介します。
薬の効能を説明する
まずは、なぜこの薬を飲まなくてはいけないのか効能を説明してみましょう。
もしも難しければ訪問看護師やかかりつけの薬局の薬剤師などへ薬の説明をしてもらえるか問い合わせてみましょう。
薬の味を変える
抗生物質や向精神薬、漢方薬などは苦味が強いものもあります。
苦味が苦手な方は苦痛に感じて服薬をやめてしまう方もいらっしゃいます。
どうしても難しい場合は錠剤や粉剤のものはカプセル状のものに変えてもらったり、吸入や貼り薬など投与方法を変えてもらったりすることも可能です。
主治医に相談して飲みやすい方法を考えましょう。
訪問介護の服薬介助に関するQ&A
訪問介護の服薬介助に関するQ&Aをまとめました。
訪問介護の服薬介助は身体介護と生活援助のどちらに該当しますか?
厚生労働省の資料によると、服薬介助は身体介護の一部とされています。
生活援助で薬を取り扱うのは、処方された薬の受け取りのみです。
訪問介護員が行う服薬介助は医療行為に該当しますか?
服薬介助を行うことは医療行為ではありませんが、PTPシートからの取り出しや専門的な配慮が必要な方、状態が安定していない方の場合は医療行為に該当します。
服薬介助と服薬管理の違いは何ですか?
服薬介助は、薬の準備をし、薬を嚥下したのを確認した後に片づけまで行う介助です。
服薬管理は、飲み忘れや間違わないように工夫して管理することをさします。
服薬介助は医療行為ではないので訪問介護員が行えますが、服薬管理は医師または歯科医師の指示を受けた薬剤師または看護師が行うことになります。
服薬介助の手順を簡単に説明してください!
服薬介助の手順は下記の通りになります。
- 水と配薬された薬の準備と確認
- 内服の手伝い
- 後片付けと確認
訪問介護の服薬介助で事故が起こった場合はどうしたらいいですか?
考えられる事故としては、服薬するタイミングの間違えや、重複して内服をしてしまった、薬を落として紛失してしまったなど様々なことが考えられます。
訪問介護員で勝手に判断せず、かかりつけ医や訪問看護師に相談し、指示を仰ぎましょう。
まとめ
訪問介護での服薬介助では、利用者に適した方法で介助を行うことが求められます。
また、訪問介護員にできることとできないことを理解しておくことがとても重要です。
医師や薬剤師、看護師など医療職と連携を取りながら行うことも必要不可欠ですので、相談しながら介助を行っていきましょう。
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