
介護業界でいま大きな話題となっている、厚労省による「居宅介護支援の特定事業所加算における要件緩和案」。
今回の提案では、これまでハードルが高かった「24時間連絡体制の確保」について、他事業所との連携でも認めようという方向性が示されました。さらに、加算(A)の経過措置付き廃止や、最上位区分(Ⅰ)における「要介護3以上の利用者割合40%以上」という要件の廃止も盛り込まれています。
一見すると「負担軽減」「加算が取りやすくなる」とポジティブに聞こえるこのニュース。しかし、現場で働くケアマネジャー(介護支援専門員)のみなさんは、本当に手放しで喜べているでしょうか?
今回は、ケアマネの現状や現場の悲痛な声、そして今回の見直しに含まれる「懸念点」について徹底追及します。
ニュースのポイント:厚労省が提案した見直し内容
まずは、今回提案された主な見直し項目を整理してみましょう。
24時間体制の連携緩和:特定事業所加算の要件である24時間連絡体制について、自社単独だけでなく「他事業所との連携」を上位区分でも認める。
加算(A)の廃止:算定事業所が少なく、目的を果たせていないとして1年間の経過措置を経て廃止。
加算(Ⅰ)の要件見直し:「要介護3以上が40%以上」という利用者の状態像に関する要件を廃止。
高齢化と同時にケアマネジャーの高齢化(60歳以上が3割超、50歳以上は66%超)が進む中、個々の事業所の負担を軽くして上位区分の算定を促したいという国の狙いが伺えます。
そもそもケアマネに「24時間オンコール」は必要なのか?現場からの悲鳴

今回の緩和案ですが、現場のケアマネジャーからは「緩和どころか、そもそも論としておかしいのではないか」という根深い疑問の声が噴出しています。
1. ケアマネの業務範囲を超えた「オンコール」の現実
「急変があれば訪問診療・訪問看護が対応するか、救急車を呼ぶしかない。時間外にケアマネが動けることなんて実質的に何もない」
これが現場の本音です。ケアマネの役割はあくまでケアプランの作成やサービスの給付管理・調整であり、直接的な医療・介護ケアをする立場ではありません。
2. 休日も電話に縛られる「シャドーワーク」と精神的疲弊
日中は昼食を食べる暇もなく電話対応に追われ、休日や夜間もスマホを肌身離さず持ち歩く……。このような状態でありながら、時間外手当や休日出勤手当が正当に支払われていないケースも少なくありません。
「心が休まる時間がない」「加算を取ってもケアマネ個人には給与として還元されない」という不満が、ケアマネのなり手不足に拍車をかけています。
「他事業所との連携で可」に潜む3つの問題点・懸念

では、今回提案された「他事業所との連携による24時間体制」で、ケアマネの負担は本当に軽くなるのでしょうか?そこにはいくつか見過ごせない問題点があります。
① 「誰が担当しても同じ」ではない個人情報の共有と責任の所在
夜間に電話を受ける人が、担当外の利用者の詳細な病歴や家族関係をどこまで把握できるでしょうか。情報を共有するための事前打ち合わせや書類作成など、「連携するための事務作業」という新たな業務負担が発生する恐れがあります。また、万が一時間外対応で判断ミスやトラブルが起きた際、どちらの事業所が責任を負うのかという曖昧さも残ります。
② 夜間の行政・関係機関は閉まっているという矛盾
夜間に利用者や家族から「明日デイサービスを休みたい」「緊急でサービスを使いたい」と相談されても、役所もサービス事業所も閉まっています。
国や行政自体が24時間体制を作っていないのに、民間である居宅介護支援事業所にだけ24時間対応を求める構造自体に無理があるのではないでしょうか。
③ サービス残業の「なすりつけ合い」になるリスク
事業所間で輪番(当番制)を組んだ場合、他社の利用者のために夜間待機することになります。その待機費用や手当を事業所間でどう清算するのか。ルール設計が不十分なままスタートすれば、ケアマネ同士の押し付け合いや、結局は現場の善意(無償労働)に頼る形になりかねません。
本当に必要なのは「意識の改革」と「デジタル化・仕組みづくり」
ケアマネジャーを質の高い専門職として確立させ、若い世代が入ってきてくれる魅力ある業界にするためには、単に加算要件を緩めるだけでは不十分です。
1. 24時間対応に対する「ニーズと現実」の切り分け

そもそも特定事業所加算における「24時間連絡体制」とは、夜間に自宅へ駆けつける義務ではなく「相談に応じられる体制」です。
夜間の急変は「119番」や「訪問看護」、日常の不安は「日中の勤務時間内」に相談してもらうという役割分担を、利用者・家族側にも正しくご理解いただく(意識のギブ&テイク)が必要です。
2. Chatbot(自動応答)などIT活用の推進
夜間の「休みます」「明日連絡がほしい」といった連絡であれば、24時間稼働するChatbotや自動音声ガイダンスなどで一次受付を代行させる仕組みでも十分対応可能です。「人が電話口で待機しなければならない」という固定観念を捨て、デジタル技術を公的に認めていく姿勢が求められます。
3. 加算がケアマネ本人に還元される仕組み

いくら事業所が特定事業所加算を取得して介護報酬が増えても、それが現場で頑張るケアマネジャーの給与(処遇改善)に反映されなければ意味がありません。「努力がしっかりと報われる処遇の仕組み」をセットで構築することが最優先課題です。
まとめ:介護の善意に頼る制度からの脱却を

今回の厚労省の提案は、ケアマネ不足や高齢化に対する一定の配慮は見られるものの、「ケアマネに24時間対応を求めること自体の妥当性」や「シャドーワークの是正」という根本的な問題解決にはまだ遠いと言わざるを得ません。
これまでの介護保険制度は、現場のケアマネジャーたちの「善意」と「無理」によって支えられてきました。しかし、その限界はすでに目に見える形で現れています。
単なる加算の緩和にとどまらず、ケアマネジャーが本来のマネジメント業務に専念し、正当な評価と休日を受け取れる業界へと変わっていくことが、日本の在宅介護を守る唯一の道ではないでしょうか。
【みなさんの意見をお聞かせください】
今回の24時間体制の緩和案について、現場のケアマネさんや介護事業者のみなさんはどう感じましたか?「うちの事業所ではこう工夫している」「こういう仕組みがあればいいのに」といったご意見や体験談があれば、ぜひコメント欄で教えてください!


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